昆虫食民族の野球

昆虫食民族は飛んできたものをとらえる

今年一番の悔しい敗戦と、それを解釈する試み

自分のケツは自分で拭かないといけない

 

ヤ 4-6x オ

 

 

6/19以来の更新。いやあシンプルに悔しいっていうか、何か吐き出さずにはいられない感情。これですよ、これこそがプロ野球、いや野球そのもの。人間がやる以上どこまでいっても不確実性に左右される絶対のない、3アウト目とりきって下駄はくまでわかんない代物が当然の役割としてブチかましてくる理不尽。コイツを罵声以外で出力してこそ、このブログをほったらかしておいた甲斐があったというもの。

 

 

さて調理を開始するにあたって考えるべきはまず、「なぜ打てる手を打たなかったのか」じゃないかなと。言葉を選ばずにいえば、先発の山下を5回3失点まで引っ張ったことです。

 

まず四回に杉本、宗の連打で一死一・二塁とされたあとの太田・紅林・若月を迎える場面。ここは右が三人続くところで、カードとして考えられるのはベテラン石山、シュートが使える木澤*1、あと可能性は薄いけど久保、田口*2というところでしょうか。

んで同点の五回にも続投して、吉田正尚と勝負に行ってバックスクリーンへホームラン。石山、田口はイニングまたぎも考えられるし、大西を送り込むこともできる。申告敬遠でベンチから手を打つこともできた*3。あと中継ぎつぎ込んでも原樹理が延長戦や中盤の複数イニングを担当するルートもある。

 

去年のポストシーズンでやったような、原樹理や高梨を行けるところまでであきらめて継投勝負ができないわけでもないし、そもそも仮に勝敗にこだわりきって日本シリーズの第5戦を確実に取る試合運びをするのであれば、未知数な部分の多いルーキーをピンチでも我慢したり馬鹿正直に五回もたせる必要がない。でもそうしたということは、何か意味があったってことになるわけです。

 

でまあ書いてる途中に一問一答が出たので、答え見て問題を解くようですけど抜粋して載せます。

 

www.sponichi.co.jp

 ――先発の山下について。

 「いいピッチングだったと思います。シーズン終盤に先輩たちがちょっとモタモタしているので、チャンスを与えたんですけれど、きょうも凄くいいピッチングだったと思います」

 ――シーズンでは2試合の登板だったが、大舞台を任せた。

 「この経験が来年に生きると思っているので、はい、思っています」

 

――清水が回またぎ。短期決戦だから。

 「もちろんそうですね。あまり、さっき言ったように、先を考えていないので、今できる最善策を取ったつもりです

 

これつまり、二つチャンネルがあるんですよ。「今このシリーズを勝つことに全力を注ぐ」ので清水はまたぐ、「来年以降のため」好投できる実力のある山下に経験を積ませ、モタモタしている先輩たちにハッパをかける。だからそれぞれどっちかへフォーカスした決断はあっても、両者の並立は矛盾していない。

 

今シーズンずっと高津監督は主力には役割を固定して信頼を表明しつつ*4、また若手や新戦力に関しても期待値に応じた試練を与えてそれを後から回収するような起用*5をちょくちょくしてきました。一問一答を見る限りでは、これ山下も後者に入ってるっぽいんですよね。たぶんみんなと同じように「お前がシッカリしないとダメなんだぞ」というメッセージが送られている。

 

 

「一軍監督の仕事」って本の中で、監督は「中長期的に日本一を狙うチームを作りたい」という大目標を掲げ、それをこう説明しています。

つまり、「いま何が必要なのか?」ということと並行して、「5年後に何が必要か?」ということを考えながら仕事をしていく。

(中略)

理想を高くすればするほど、うまく行かないことも増えるだろう。それでも、理想を掲げてそこに向かって取り組んでいく方が僕は好きだ。

それが「黄金時代」を築くことにつながるはずである。

高津臣吾「一軍監督の仕事」230ページより

 

 

だから結局セ連覇を果たし、球団史上初の日本シリーズ連覇をかけて戦ってる最中でも、確信犯的に「この一瞬以外」にも目を向けてるのはいつもと変わんねーんですよ。去年日本シリーズ勝ってんだし、使えるピッチャーいねーんだし彼の成長と可能性にかける方がいいでしょって具合に。

「正しい選択」を導き出す努力をして、躊躇なくその選択肢へ飛び込む。クソとんでもねーギャンブラーですよこれ。アカギかよって。やっぱ140キロの真っ直ぐとシンカーだけで300セーブやったピッチャーは心臓の出来が違うんやと思います。

 

だから今回も高津監督とスワローズに託して次の試合を待ちます。彼らが正しいと思ってベットして、正しい動きをしているなら、我々ファンは根本的には応援して見守るしかないんすよ。

 

マクガフ、次も頼んだで。

 

 

*1:昨日26球放っているとはいえ、ベンチ入れたってことは使う可能性があったことになる

*2:共に火消し経験あり

*3:後出しにはなるけど

*4:山田、マクガフ

*5:長岡、内山、木澤、小澤、かつての高橋

リード以外からむーちょ復帰後を考えた話

幸せな当惑と理由探し

 

 

引っ越し会社のCMに、怪獣並みにでかくなった赤井英和が「なんでやろなあ」とつぶやいたら「まじめにやってきたからよ~」と能天気な返事が返ってくる、というのがありまして。

 

youtu.be

 

スワローズもいつの間にかでっかいチームになりました。なんでやろなあ。

6/18時点で64試合消化して42勝21敗1分の貯金21。勝率は.667*1ですから、荒っぽくいえば開幕から二勝一敗をずーっとやってきたのと同じわけです。

得点261はリーグ1位で失点203は阪神の次点。差し引き得失点差+58はホークスに次いで12球団2番目の好成績です。聞くところによると指標も全体的にいいらしい*2

 

じゃ実際それだけ安定感のある王道野球のチームなのかと言われると、またちょっと違った言い方になると思うんですね。そもそもからして開幕ふたカードが三連勝と三連敗だし。

派手な逆転劇のあとはピッチャーが粘って三連勝。そして神宮に帰ってきて、巨人のミスのない守備と一発攻勢に力負けして三連敗。4月に入っても「3点取られたら全部負け」を異様なビジター勝率で帳尻して5割キープ。打つ打たないの差はあれど、「ハマれば強いがどうにも脆い」という傾向は親の顔より見たスワローズ。

 

わかりやすいターニングポイントは5月頭の甲子園でむーちょが帰ってきて、ライアンとバッテリー組んで完封勝ちしたところですかね*3。このあと三連勝と一勝二敗を挟んで10カード連続で勝ち越し、この期間だけで貯金18がもたらされました。あれ以来、なんかわかんないけど点が入るしなんかわかんないけどピッチャーも粘れるという不思議な好循環が続いています。

むーちょ本人も巧みな打撃で3割前後をマークし、代打でも最終盤に貴重な働き。攻守でチームを支えています。ありきたりなこじつけですが、むーちょ復帰後の躍進というのは今年のスワローズを象徴するものなんじゃないかと。こうした百戦錬磨の選手のプレーは、なんというか勢いに確実性を加えると思うんですよね。

 

本質に立ち返れば山田・村上の長打や塩見のスーパープレー、お家芸の集中打でさえ毎回の成功が約束されているわけではありません。新顔の多かった昨年の打線にも2・6番には出塁能力があって何でもできる青木・中村がいて、待球や進塁打でチャンスメークをこなしつつ、要所では伏兵的にポイントゲッターの役割を果たしていました。

まして今年はレギュラーへ近い位置に若い選手が多くいるわけで。交流戦で坂口が呼ばれたり、ヒットの出ない時期もあった青木や川端、宮本がベンチにいるのは、バットに当てたりカウントを作る技術に間違いがなくて、若手や中軸の爆発に頼らなくてもいい形を持っておけるという意味があるんじゃないでしょうかね*4

 

真中さんは「戦力が整っている(チーム力がある)」と(わりに実も蓋もなく)評した*5そうですけど、このフレーズには村上・山田・塩見が縦方向に貢献を積み上げるだけでなく、若手からベテランまでそれぞれが一芸と役割を持っていて、束になってかかっていくチームというイメージが含まれているように思います。

 

まあそうはいってもリリーフ勝負なので綱渡りのように緊迫したゲームの連続に思えるんですけど、案外いまのスワローズはやってる役者がサーカスのスペシャリストなのかもしれませんね。

 

 

*1:試合中に書いてる

*2:UZRがよくてWAR上位に塩見村上山田がいるとか

*3:神宮が雨で流れてこれが5月最初の試合だったので、5月以降の成績というのはむーちょ復帰後の成績とぴったり重ねることができます。実にわかりやすい。

*4:これはギャンブル気味の継投を成立させる保険としての田口にもいえる

*5:

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冷蔵庫のあまりものを処理しておく回・その2

ライアンのこと編

 

というわけで後編です。作り置きを翌日の朝メシにした感じでよろしくどうぞ。

 

 

その3:ライアンのみせた美しさの話(四球とコロナとライアン)

これは確かブログ立ち上げてすぐくらい思い立ったネタで、1-0で勝った9月15日の阪神戦で書こうとしてたやつでしたかね。前日は9回にマルテのスリーランが飛び出して引き分けに終わり、首位阪神に食らいつくためにはどうしても落とせないゲームでした。

先発したライアンは無失点ピッチングながら6安打5四球で11人の走者を背負い、リードは初回に挙げた1点のみと重い展開。8回裏にはとうとう二死満塁でヤクルトキラーのサンズを迎える絶体絶命のピンチが到来し、ここで清水をつぎ込み三球三振を取ってなんとか1-0の逃げ切り勝ちを収めました。ライアンは翌週ハマスタで投げますが、こっちの試合も6四球出して被安打3の1失点と、調子の良し悪しをなにか通り越したような投球でして。

 

個人的にはライアンといえば速球とカットボールを内外へきっちり投げ切るイメージ(=球威と制球のバランスが取れている)があるんですけど、今年は好投する試合でも不思議に与四球が多かったり、さくさく抑えてるときも中盤に長打や連打であっさり失点したり、なにかモヤモヤする投球が続きました。チーム別に見てもセ相手に防御率4.00を切ってるのは中日戦のみだったりします*1

 

それでもチームで一番のイニングと勝利を稼いだわけで、欠かせない投手である事に当然変わりはないんですけど、なんというか今年のライアンはもがきながら前に進み続けたようなシーズンだったのかなと勝手に思ってまして。開幕からうまく行かずに一度ミニキャンプ張って、5月に好投したかと思えばコロナに罹ってまた調子を崩し、結局二けた勝利にも規定投球回にも届かなかった。体調のみならず、奥川に代表されるようなストライクゾーンで勝負する方針*2との兼ね合いもあったでしょうし、球威と制球のバランスには例年以上の難しさを感じていたんじゃないかと。

それでも先に挙げた阪神戦や、中五日で挑んだ10月6連戦の初戦、一勝一敗からホームで迎えた日本シリーズ第三戦のように、振り返ってみるとここぞという試合を作ってチームの流れを壊さず勝ちへつなげてきた。このあたりからはやっぱりエースとしての矜持とか*3、泥臭くも自分の仕事を果たしてみせるプロとしての美学といったものを想起させられます。

 

元々かなり工夫をする人ではあって、例えばキャンプではライアンの新フォームが風物詩だったりします。代名詞の左足を大きく上げる動作ひとつとっても、前年とまるっきり同じ形というのはちょっと記憶にありません。高津さんも記事でこんなことを言ってはります。

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野球選手って"変化"に対して意外と臆病なんですよ。野球道具もそうだし、ピッチャーならプレートの位置を少しずらすだけでも悩みます。でも小川は『これを試してみたら』とアドバイスすれば、すぐにトライできる。変化することへの勇気があり、発想の転換など、すごくうまい選手だと思います。

こういう試行錯誤はライアンの長所であるとともに、171センチの体でエースやるには相当の苦労が要ったという事の裏返しやと思うんですよ。それでもエースとしてイニングと勝ち星稼ぐ役割を背負い続けて、苦しんだかもしれないけど日本一へ確かにつながった。ヤクルトに残ってくれてやっぱりよかったなあと思いますね。

 

来年からは選手会長。一歩引いて奥川高橋らへんに譲った感もありますがなんのなんの、年季が違うとばかりに逞しくやってほしいですね。

 

*1:これは中日打線がどうこうよりナゴドの防御率1.26が影響してるっぽい

*2:四球続きで降板した原樹理に厳しめのコメントが出たりしていたはず、見当たらないけど

*3:奥川をほめておいて白々しいけど

冷蔵庫のあまりものを処理しておく回・その1

このままお蔵入りも忍びない

 

 

第5戦のあとに投稿して〇週間ほど経ちましたが~みたいな出だしを考えていたんですが、延びに延びてこんな時期になってしまいました*1。まあ日本一どうこうの話は公式やマスコミが色々なところでやってますし、場末のしょぼいブログらしく気楽にやっていこうかなと。元々は変な負け方でうっぷんが溜まらないと更新してこなかったんですけど、試合もないんで「下書きに入ってる書けなかった記事」をちょろっと持ってきてぐだぐだしゃべろうと思います。

 

 

その1:スワローズライブ達川氏の解説について(考えるには助走が要る)

これは9月の広島戦のころに書こうとしたんだったかな、達川さんがそれしかないかってくらいむーちょのフレーミングをほめちぎった日*2。名捕手としてプレー内外のエピソードに事欠かない達川さんですが、その、あの、毎度毎度ヤクファンから解説を辛らつに評されておりましてね、ワイもそうなんですが(白目)。しかしまあ達川さんもプロだしそう適当な仕事はしないだろうというおきらくな視点に立って、一度その訳を考えてみようじゃないかという思惑でした。

でまあ結論として、この人の脳ってジェットエンジンみたいなものだと思うんですよ。名捕手と言われるだけに頭脳の最大出力は凄まじいはず。でもその割にはセオリーとか先入観、イメージから話が始まっている気があって、どうやら最大出力にいくまでに情報・経験のような多くの条件(助走や燃料、整備)を必要としているんじゃないか?っていう。「喋れば喋るほどリードも冴えた」っていうエピソードのあるのはつまりそういうことかなーって。でも解説って現場と違って途切れ途切れだから情報も細切れになって、むーちょの褒めどころがその場でわかるフレーミング一辺倒になったのかなっていう邪推でした。まあ単に適当な材料見つけて三味線弾いてるだけかもしれないんだけど

 

 

 

その2:奥川の話(と一流になった塩見)

CS第一戦のあとに書こうとしたやつ。うかうかしているうちに鮮度が過ぎて完熟も完熟、もはや説明不要の題材になってしまった。

未来のエース、明日のエースと言われてきた奥川ですが、「あしたって今さ!」ってな具合で。いやホンマあんなの見せられたらねえ。ストライク取るのに全く苦労しないのもそうだけど、なんかこう単純に野球がうまいんですよね。ピッチャー返しの痛烈なのをすんなりとってゲッツーにしちゃったり、バスターエンドランを軽々決めてしまったり。ドラフトのクジ引きをエンタメたらしめるのはこういう一人で完結させてしまうようなピッチャーなんやなって。

でまあ攻撃面では塩見がツーベース二本に好走塁とワンマンショー。この後のふた試合でもほとんど一人で打線を引っ張り、ホントにMVPでもおかしくないような活躍でした*3。短打で生還できる脚力や一人で決めきれる長打力もありつつ粘っこい打撃もできるわけで、塩見がバリバリやれてるうちはヤクルトらしい野球も継続できるんやないかなーと思いますね。

 

 

もう一本は長くなったので別記事で

*1:もうクリスマスプレゼントですわな

*2:恐らく9/19の原樹理が投げた試合

*3:日本シリーズは流石にむーちょか奎二かなって

あと二試合見られるんだなあという話

ヤ5-6オ

山田が目覚めて川端が出てきた

 

 

えー、負けた時の方が書くこと多いですねえ、まあ和尚やマクガフほどのピッチャーが打たれるってことはそれだけ劇的なゲームなわけですし。ジョーンズはこれで二試合を決めたわけで、流石メジャーリーガーでキャプテン・アメリカだなあという溜息の漏れるところですけれど、しかしながらウチも選手の格じゃ負けてねえぞって。

 

山田のスリーランはそれをまさしく証明する一発でした。Mrトリプルスリー、ツバメのキャプテン、東京五輪MVP、青木宣親から背番号1を受け継いだ男等々、彼を評する肩書や実績のプールは神宮球場をいくつ満たしても足りないでしょう。そこを基準にするなら「打ってくれる」という期待に応えたのは必然で、つまりそういう男があれで目覚めたわけですよ。というか村上ともども第三戦でも第四戦でもいい当たりしてたしアウトになってたのがそもそもおかしい。二試合続けて今ひとつだった京セラではちょっと体調を心配しましたが、守備ではファインプレーも出てました。村上のほうも苦しんでいた速球を流し打ち、内角をスリーベースにして、いよいよ吹っ切れた感があります。

 

そして九回裏には代打で川端慎吾が登場。温存に次ぐ温存でこちらも故障が疑われてましたが、守護神平野の高めに浮いたフォークを強振しあわや同点・逆転かと見紛う大飛球*1。まあうちの打線は西浦に期待しなければ1から8番までみんなタイプの違う強力打線ですからね、出すところが無いのはしゃーない*2。復調したオスナ代えろっていうのはもうないと思うけど、あとひとつ勝ちゃーいいわけですから元山の状態次第で西浦に切ってくるかもしれない。まあそれにも宮本が出られるか塩見が状態整えるかのどっちかが要るんで、鳥としては後者に期待したいですね。

 

これまで勝ったゲームは青木さんのヒットにサンタナむーちょオスナの下位打線が肝心で、要するに山田村上が冷えてる時に四球もぎ取ってじわじわ詰将棋やる時のパターン。塩見がちょっとイマイチで火力は限定的でしたがピッチャーが頑張って3試合を取れた。これで山田に村上が打てて川端慎吾が万全ならもう最大火力、こっからは一丁派手に野手のゲームをしてもらいましょう。

 

負けの翌日を試合なしで過ごすのもメンタル要りますけど、選手の皆はいい言葉を知ってますから、彼らは絶対大丈夫だと思って過ごしましょうや。

*1:わかるけどカメラなんとかしてくれ、CSもこんなんなかったっけ?

*2:第二戦の9回第四戦の6回は西浦が出塁するか宮本がいれば本当に出てきたような気がする

向こうもタフだがこっちもタフだという話

ヤ3-4オ

巨人や阪神を倒すのも一筋縄ではいかなかった

 

 

めちゃめちゃいいゲームだっただけに、勝てなかったのがめちゃめちゃめちゃ悔やまれるゲームだったなあという感じですかねぇ。

 

先発は山本と奥川で、奥川はすさまじい投球を見せてエースの仕事。選手会長むーちょは先制タイムリーを打って投手も打線も引っ張り、村上はここ一番で値千金のホームラン。8回裏はしみのぼが中軸二人を切って取って、その後の大ピンチも踏ん張り無失点。

山本由伸に正面からあたることはない、みすみす奥川で落とすことはないじゃないか。そういうハナっから弱気な外野の声*1をひっくり返しての試合運びは実に痛快で、良くも悪くも期待を裏切るスワローズらしいなあと思っていました。

ところが九回、守護神マクガフが痛恨の2四球。試合序盤から振れていた宗・吉田へ回ってしまい、彼らに試合を決められてしまいました。

 

 

いい流れを全部無に帰す負け方は非常に精神衛生に悪いのですけれども、だからといって「これで終わったー」なんていうのは早計だと思うんですよ。

個鳥的に思い出したのは8月末から9月頭の巨人三連戦の三つ目で、岐阜と京セラで二つ負けて迎えたゲームです。

baseball.yahoo.co.jpこの試合もどすこい山口とカツオさんで1-1の投げ合いになって、九回に代打川端でビエイラ打って勝ち越した。さあこれでこの三連戦は最低限取り返したぞ、という九回に若林の打球が塩見を飛び越えて、なんとか引き分けに持ち込んだしんどいゲームでした。

 

でまあこれもマクガフが打たれたゲームでしたけど、この翌日が大瀬良-スアレスの広島戦でして。

baseball.yahoo.co.jpこりゃズルズルいくかなあと思いきや塩見の先頭打者弾が飛び出して、結局3-1で勝ちました。何なら九回にマクガフをあげてセーブ取ってます。ついでに、甲子園で奥川高橋突っ込んで阪神に勝ち越したのはこの翌週でした*2

 

例えば和尚も岡本にスリーランかっ飛ばされた試合とかがあって5つ黒星がついてて、マクガフもマルテの一発で星を落とした試合*3があったわけです。10月神宮の6連戦まで、この2チーム相手に一貫して優位に進めて勝つようなカードはほとんどなかったと思います。

 

逆に言えば日本シリーズに上がってくる相手だから、巨人阪神同様に最後までしぶとい野球やってくるのは当然で。しかしそれでもスワローズは一度巨人阪神という強いチームを乗り越えて優勝している。

要するにこのチームは粘っこいんです。山本由伸を6回で引きずりおろした打線がその象徴ですよ。明日はおおかた宮城が投げるんでしょうけど、やるべきことは大きく変わんないと思います。

 

抑えの被弾や救援失敗なんて翌日勝てば屁でもねえし、次の試合のマウンドに上がれることがなにより大事。現役時代の高津さんが一番よく知ってるはずです。劇場王だけに

 

*1:とはいえ「カツオさんで目先外したいなあ」って思ってないこともなかった

*2:そんで週末からバンテリンへ行って、例の猛抗議がとびだす

*3:9月14日の神宮

成り立った今にある尊さ

よかった、本当によかった。スワローズは優勝を果たしました。

 


なんだかじんわりくる優勝です、実感があるようでない不思議な感覚。開幕前のトレードがあって、三連敗を喫した開幕カードがあって……

 

3月、4月がもう遠い昔のことのようです。色々なことが起こりました。とてもじゃないけど信じられないようなことが次から次へと起き続けました。そういえば今年の初勝利も逆転劇でしたかね。


時にはいいことばかりじゃなくて、目を覆いたくなるような瞬間もあったけれど、その比率はちょっと前に比べてかなり改善したと思います。そしていいことの比率は段々高まっていって、接戦をひたすらモノにしていく。その過程でキャプテンや青木さん、ベテランたちはは口をそろえて「強いチームになってきている」とスワローズを評しました。

 

そして迎えた勝負の9月・10月、いつの間にか「いつもすごいことを起こす」チームが出来上がっていました。先発が踏ん張って、打線が四球を絡めた長打と集中打、あとはバトンを受けたリリーフがぴしゃり。そこにあったのは各選手が自分たちの個性を発揮して役割を果たす、確かに強いチームでした。

 

これでスワローズはようやく、11年のツケを返せたのかもしれません。

 

 

 

優勝の二年後に96敗を喫するほどまで細った選手層と、優勝を果たせぬままにメジャーへ旅立った背番号1。

 

強いチームを作り、忘れ物を取り返すための戦いが始まったのが18年でした。この年ルーキーとしてプレーしたのは村上、大下、塩見、金久保、宮本ら17年ドラフト組。結実が今季であるとすれば、彼らの活躍は必然かもしれません。

 

決して平坦な道のりではなかったでしょう。19年、20年には2年続けて最下位に沈みました。「弱い」ということに向き合う作業を乗り越えた2021年、スワローズは強くなりました。

チームを去った選手、故障に苦しんだ選手、矢面に立たなければいけなかった選手や首脳陣…それを土台にしつつ、それでも成り立った優勝。何もかもが報われなくとも、だとしても、だからこそ何にも代えがたい。届かなかったものをスワローズは手にしたのです。

 

 

信じられなかった出来事がとうとう実体を持って、噛みしめられる喜びに変わりました。前言撤回します。すごくすごくうれしいです。幸せです。

 

今夜くらい、いやもう2,3日…やっぱりしばらくは一羽でこっそり喜びを堪能したいと思います、まあそれくらいは許されるでしょう。

 

 

だって優勝したんですからね。