昆虫食民族の野球

昆虫食民族は飛んできたものをとらえる

ネット環境なしでいいから今年の神宮に巣を作りたい鳥

そういえば今の神宮球場で観られるのも残り数年ですかね

 

 

まー順位予想の記事とかね、気が向いたときに書いてたんですけどね。戦力的には巨人阪神が頭一つ抜けていて、でも各球団の出入りと成長株を照らし合わせると意外に差がなくなってる気もする、こりゃ開幕でどこが抜け出ても不思議じゃないね、しかも中田獲ってきた中日と開幕カード神宮、これは特にカギになるかもしれないぞ…みたいなのを。

ただまあそういうの吹っ飛びますわな、困惑しました。キャンプ前まで引っ張って「やり返せ」ときたか、と。正直ウチのことも他所とのこともいろいろよぎるし、でもよぎるところまで計算に入れてないとこれは出てこないようにも思うし、むしろどこまでよぎっていいんですかって聞いてみたいくらいなんですよね。

 

まあ「推し」という概念が持ち込まれたり、ボールパークという仕組みが広がったりで、なにかアイドルと観客の世界のように扱われていますけれども、プロ野球って勝ち負けも優劣もある勝負の世界です。神宮球場やスワローズというのはエンタメサービスとしてみるとなかなか広く浅く人気が出るようには出来てないですけど、こと野球そのものには間違いなく他のチームに負けないくらい考えて考えて考えて力入れてるチームです。そういうチームだからあれはブランドのキャッチコピーとかじゃなく、いったん野球チームの今年のスローガンという文脈で読まないといけない。鵜呑みにするなら高津監督が決めたそうだし。

 

じゃどんな文脈なんだ、と。ひとつには間違いなく昨年に対する悔しさの表れ、そしてそれをバネにするんだというメッセージです。

 2024チームスローガン発表!東京ヤクルトスワローズ - YouTube

昔の本は読めてないんですけど、高津“監督”として出した本には確か二冊ともプロ野球選手は負けず嫌いじゃないといけない、とかハングリーじゃないといけない*1という内容がある。まして2004年に初めて高津さんが出した本のタイトルは「ナンバー2の男」という、これまた反骨心が伺えるタイトルです。そういう人が発する「悔しさを晴らせ」というメッセージは選手へのものというより、むしろ全くの本心だとしても何らおかしくない。

それを受け取る選手にしたって、おととしは二年続けて11月に野球をしていた面々です。それが秋どころか夏場を前にシーズンが殆ど終わってしまって、不本意な成績に終始した、壁にぶつかった、あるいは戦う場にすらいなかった。やり返せって言われてる彼らには、すでに一度やられているんだぞ、という事実が再び突き付けられている。村上山田塩見に高橋中村だけじゃなく、若手もベテランもリリーフも先発も戸田にいた連中もスワローズがみんなまとめてお前ら悔しかったら勝ってみろって言われてる。そこに燃えてくるものがなければ——指揮官の言葉を借りれば——プロ野球選手じゃないぞと。そういうメンタル的にもう一回奮い立たせる部分を思えばこれはキチンとスローガンなんだと思いますね。まして不世出の大打者が渡米するまであと2年ですから、これ以上ない力の入れ時でしょう。

 

 

ただねえ、プロ野球チームのスローガンって横断幕にしてホムペにのっけてそんでおしまいとかじゃなくて、広く公表するもんだから、これで手羽止めるわけにもちょっといかないと思うんですよね。よぎる部分にも触れないといけない。

危うい。危ういんですよこのメッセージ、鳥だからちょっとずれてるかもわかんないんですけど、やり返せってのはやられた相手がいて、これからやっつけないといけない相手がいる場合の言葉ですよね。そしてその戦いの存在をびしっと明示する。一見りりしいアイドルのようなプロ野球選手が、その実野武士のようにたくみに、狡猾に、相手チームをやっつけるべく野球やっているんだよ、ということを改めて示すんです。自分たちと(倒すべき)相手チームがあるという構図によって、両者の輪郭が境界線となって浮かびあがる。

だからこれ、はっきり言ってチームの旗印という部分を濃い目に含むはずなんで、他ファンがうっ、となるのもそりゃ当然だよなと思います。だからっつってファン同士喧嘩しろって言うてるわけじゃないんですけど、仮に高津さんに親近感のようなもの持ってるほうが逆に敵将としての要素を意識させられるというか。鳥の困惑はそういうものがばしっと球場の外で出されたことあったっけ、というのがひとつです。なんとなく「絶対大丈夫」以来の確信犯的ギャンブラー要素だったり、あるいはまた何か監督だけが知っている新たな形なのかという予感もあったりはするんですが。

 

 

まあでも、これは来年ではなく今年出てきたわけで、やっぱり今が「悔しかったら勝ってみろ」を言い聞かせるには最高のタイミングなんだろうと思います。結局セ5球団、いやパ6球団、11球団どこ見たって舐めてかかれるとこないぞ、自分たちが力つけるんだぞって。

 

野村ヤクルトは様々なものを背負った長嶋巨人と競い、そこに引導を渡したのがマシンガン打線の横浜でした。2011年には歴戦に歴戦を重ねた古強者の落合中日が立ちふさがり、2015年のあとにはあきれるほどに強かった三連覇広島がやってきた。そして昨年とうとう阪神が二度目の日本一になった。あるいは阪神がこれから黄金時代を築くとしても、同じ時代にある以上簡単に負けていられない。悔しかったら勝ってみろと言われ続けてそれでもついに勝った強いチームを向こうに回して戦って、こんどのスワローズはどんな風に変化するんでしょうかね。神宮に巣作ってひたすらそれだけを眺められないかなあ(鳥)

 

 

*1:これに付随してマイナーリーグと比較して、あんまり二軍が快適だとおかしいんじゃないかみたいなことも書いてたほど