ライアンのこと編
というわけで後編です。作り置きを翌日の朝メシにした感じでよろしくどうぞ。
その3:ライアンのみせた美しさの話(四球とコロナとライアン)
これは確かブログ立ち上げてすぐくらい思い立ったネタで、1-0で勝った9月15日の阪神戦で書こうとしてたやつでしたかね。前日は9回にマルテのスリーランが飛び出して引き分けに終わり、首位阪神に食らいつくためにはどうしても落とせないゲームでした。
先発したライアンは無失点ピッチングながら6安打5四球で11人の走者を背負い、リードは初回に挙げた1点のみと重い展開。8回裏にはとうとう二死満塁でヤクルトキラーのサンズを迎える絶体絶命のピンチが到来し、ここで清水をつぎ込み三球三振を取ってなんとか1-0の逃げ切り勝ちを収めました。ライアンは翌週ハマスタで投げますが、こっちの試合も6四球出して被安打3の1失点と、調子の良し悪しをなにか通り越したような投球でして。
個人的にはライアンといえば速球とカットボールを内外へきっちり投げ切るイメージ(=球威と制球のバランスが取れている)があるんですけど、今年は好投する試合でも不思議に与四球が多かったり、さくさく抑えてるときも中盤に長打や連打であっさり失点したり、なにかモヤモヤする投球が続きました。チーム別に見てもセ相手に防御率4.00を切ってるのは中日戦のみだったりします*1。
それでもチームで一番のイニングと勝利を稼いだわけで、欠かせない投手である事に当然変わりはないんですけど、なんというか今年のライアンはもがきながら前に進み続けたようなシーズンだったのかなと勝手に思ってまして。開幕からうまく行かずに一度ミニキャンプ張って、5月に好投したかと思えばコロナに罹ってまた調子を崩し、結局二けた勝利にも規定投球回にも届かなかった。体調のみならず、奥川に代表されるようなストライクゾーンで勝負する方針*2との兼ね合いもあったでしょうし、球威と制球のバランスには例年以上の難しさを感じていたんじゃないかと。
それでも先に挙げた阪神戦や、中五日で挑んだ10月6連戦の初戦、一勝一敗からホームで迎えた日本シリーズ第三戦のように、振り返ってみるとここぞという試合を作ってチームの流れを壊さず勝ちへつなげてきた。このあたりからはやっぱりエースとしての矜持とか*3、泥臭くも自分の仕事を果たしてみせるプロとしての美学といったものを想起させられます。
元々かなり工夫をする人ではあって、例えばキャンプではライアンの新フォームが風物詩だったりします。代名詞の左足を大きく上げる動作ひとつとっても、前年とまるっきり同じ形というのはちょっと記憶にありません。高津さんも記事でこんなことを言ってはります。
野球選手って"変化"に対して意外と臆病なんですよ。野球道具もそうだし、ピッチャーならプレートの位置を少しずらすだけでも悩みます。でも小川は『これを試してみたら』とアドバイスすれば、すぐにトライできる。変化することへの勇気があり、発想の転換など、すごくうまい選手だと思います。
こういう試行錯誤はライアンの長所であるとともに、171センチの体でエースやるには相当の苦労が要ったという事の裏返しやと思うんですよ。それでもエースとしてイニングと勝ち星稼ぐ役割を背負い続けて、苦しんだかもしれないけど日本一へ確かにつながった。ヤクルトに残ってくれてやっぱりよかったなあと思いますね。
来年からは選手会長。一歩引いて奥川高橋らへんに譲った感もありますがなんのなんの、年季が違うとばかりに逞しくやってほしいですね。