昆虫食民族の野球

昆虫食民族は飛んできたものをとらえる

連覇したチームの監督の話

京都銀行くらいの長い目で見よう

 

 

先日TLで12球団の監督の采配をランク付けしたツイートが流れてきたんですね。

 

 まあ3年目になる番長の采配を横浜ファン曰く、とことわって書いてるあたり、恐らくパリーグ専門に見てるんだろうと思う*1。とはいえ一応中嶋・吉井両監督がすげー上位にいて、そこはちょっとわかる。中嶋監督の若手中堅ベテランを使い分ける見事な用兵には、去年おととしの日本シリーズでも煮え湯を飲まされた覚えがあるし、吉井監督は言わずと知れたコーチングの達人で、日本一の投手コーチと聞かれたらたいていの野球ファンからその名が挙がることでしょう。

 

 で、まあなんですけどこの表ちょーーーーーーーーーーーーっとそれ以外の監督を悪く書いててですね。特に最上位に位置づけられている中嶋監督同様、2年連続最下位のチームを連覇&日本一にもっていった実績のあるウチの高津監督をD評価というのは流石に節穴がすぎるやろ ちょっとすっとこどっこいな評価なんじゃないかっていう。修正になっていない。ちなみに理由としては「結果は出ているが時々奇行が目立つ*2。選手を信頼、固定しすぎる」ということらしい。

 

 言いたいことはわからなくもない。日本シリーズで結果的に裏目ったキャプテンやマクガフ、今季でいう村上の4番なんかはチームの軸としてテコでも動かさない部分だし、奇行っていうのはたぶん3番太田とか申告敬遠の満塁策みたいに、成否はともかくとして時々やるすげー派手なギャンブルのことでしょーかね。

 

 しかしそういう派手な事っていつもいつも起こることではないんですよ*3。じーっと見てないとわかんないこともある。  動きが少ないことにしたって、先に挙げたパの2人と比べてちゃんとレギュラーが8人揃うチームなんだから、彼らが実力を発揮できるように整備をすればよいという側面だってある。というか今季は塩見やキャプテンのコンディションの都合で面子が揃わなかったから、そもそもだいぶ動かしてる。そうなると若手が出てくる=スタメンと比べて一枚力の落ちるラインナップが並ぶわけですから、それを踏まえた作戦を立てるのは至極当然といったって良い。質より量で得点圏を作るために盗塁仕掛けまくったり、濱田内山の若手一・二番にランエンドヒット命じたり、あるいは長打が出ない中で一点取ることを考えれば、賛否両論あるけどバントも工夫の内に入るでしょう。

 

 裏を返せばある程度の所まで成長した選手には、その選手に合わせたハードルを与えていくイメージがある。大舞台での活躍や重圧に打ち勝つこともそう、中心選手が長く出続けるというのもそう。結果が出たら結果を出すだけじゃないんだよ、という。実際キャプテンは右打ち取り入れたりしてますからね。役割を与えられて成長するのは若手だけではない。おそらく奎二*4や木澤、大西らリリーフ陣*5あたりの一軍定着組もそうでしょう。

 

 だからね、見ようによっちゃ高津監督って凄く常識的な采配をしてるんですよ。2022年以降の高津監督は優勝もそうだけど、黙ってても勝てる常勝チームの作成をやろうとしています。「勝ちながら」です。これは本人が著書に書いてますもん。そもそもからして、中10日や2番むーちょみたいな優れた用兵・奇策も用いて普通の一軍監督に求められる結果をすでに出しちゃってるんだから。ただ、それをずっと繰り返すんじゃなくて、それをしなくても勝てるようにチームを大きくする。今いるメンバーを鍛え、次優勝する時にはスワローズが奇策を使わなくてもいい、真に強いチームになる為に今できることをする。これ凄く常識的じゃありません?

 

ともすればこれは、かの野村監督の影響をみるところです。あれですよ、プロ野球選手である前に一人の社会人だってやつ。スワローズウェイって折に触れて高津監督言いますけど、あれって野球に対する理解の深さにプラスして、1人の人間に対する深い思慮が込められていると常々思うんですよ*6

 


そりゃあ、ただひと試合ひと試合の結果を求めていくのが興行としてのプロ野球かもしんないけど、そこに将来のよりよい興行のために力を蓄えるチームが遅れをとるのは普通のことじゃないですか。でもそれを、何度も勝ったことのある、極めたことのある人がやっているから凄みがあるんじゃないでしょうか。

 

 もっとも、例の表作ったひと曰く中嶋監督は「結果を出してるし文句なし」、吉井監督は「下馬評の低いチームを上位にもっていっている」から高評価だそうです。うーん、単にセ・リーグ見てないんやろなというしょうもないオチで終わり。

 

 

 

以下余談

最近の試合を観ててちょっとだけ不安になるのが、去年とかおととしにあった「神通力」みたいなものを感じないことなんですよね。落合中日とかにあったとされる「普通のことをやってるだけなのに勝手に向こうがこける」ってやつ。

これは例のひとのことを笑ってられない主観的な考えなんですが、凄く常識的に合理的に考えていったらこれやろな、というのを迷いなく打ってくるタイプに意表を突かれていた相手が落ち着きを取り戻した感があるんですよね。それこそ00年代の老将が復帰したり、そうでなくても優秀なヘッドコーチがついていたりして。

 

一方でそれはスゲーことなのかもしれません。だって

まあ、相手チームも多分同じようなことを考えているのではないかなというところですね。

巨人・原監督「相手チームも多分同じようなことを考えているのでは」 打ち合い制し1237勝目― スポニチ Sponichi Annex 野球

これを1000勝してWBC勝った監督に言わせてるんですよ。高津さんはその監督と同じくらいのレベルにいるって読めるじゃないですか。考えすぎか?

 

ただちょっと今日の采配はそういう域に達したからこそというか、将棋の達人同士の知恵比べの最中に、急に考え過ぎの頓死が出たような、そういうヤな予感がしました。別に今年は去年おととしの分があるし、まだ5月の半ばなんですけどね。

願わくばヤングスワローズが不動のスタメンに育ったとき、監督が裏で寝てても勝てるチームになっててほしいもんです。

こんどこそ終わり

*1:じゃあなんで他のセの監督もよく分からないって書かないんだ

*2:読んでた時ここで吹き出してしまった

*3:仮にいつもそういうことが起こり始めたとしたら、それは17年みたいにチームがひどいことになってるはずだ

*4:中6で回って規定に乗る

*5:田口抜きで1イニングを任される

*6:アルファポリスの連載とかすごく選手を見てるんやなって思います